メンタル

妊活と仕事を両立する7つの方法|心が軽くなる実践ガイド

【この記事の監修・執筆方針】
本記事は、日本生殖医学会のガイドライン、厚生労働省の調査報告、および国内外の生殖医療に関する学術論文に基づいて執筆しています。医療ライターとして、正確なエビデンスと読者の方々の実体験に寄り添った情報提供を心がけています。なお、個別の治療方針については必ず担当医にご相談ください。

「妊活と仕事、どちらかを諦めなきゃいけないの?」——そんな思いを抱えている方は、決してあなただけではありません。妊活と仕事の両立は、多くの女性が直面する切実な悩みです。

厚生労働省の「不妊治療と仕事の両立に係る諸問題についての総合的調査」(2017年)によると、不妊治療経験者のうち約16%が「仕事を辞めた」と回答し、約8%が「雇用形態を変えた」と回答しています。さらに、NPO法人Fineの調査(2018年)では、不妊治療と仕事の両立が難しいと感じたことがある人は約96%にものぼりました。

「通院のたびに仕事を休むのが申し訳ない」「周囲に妊活のことを話せない」「ストレスで心が押しつぶされそう」——こうした声は、妊活中の方々から本当によく聞かれます。

この記事では、妊活と仕事を両立するための具体的な方法を、メンタルケアの視点を中心に詳しくご紹介します。職場での伝え方、スケジュール管理のコツ、ストレスとの付き合い方まで、今日から使える実践的な情報をまとめました。読み終わるころには、「自分にもできそう」と少し心が軽くなっているはずです。

📌 この記事でわかること

  • 妊活と仕事の両立が難しい本当の理由と、その背景にあるデータ
  • メンタルを守りながら両立するための具体的な7つの方法
  • 職場への伝え方・伝えない選択、それぞれのメリットとデメリット
  • 利用できる公的制度・職場の支援制度の最新情報
  • 「もう限界かも」と感じたときの対処法とセルフケア

妊活と仕事の両立が「つらい」と感じる理由

妊活と仕事の両立に悩む方は非常に多いですが、なぜこれほどまでに「つらい」と感じるのでしょうか。その背景には、身体的・精神的・社会的な複数の要因が複雑に絡み合っています。

通院スケジュールと仕事の板挟み

不妊治療では、排卵のタイミングに合わせた通院が不可欠です。特に体外受精や顕微授精などの高度生殖補助医療(ART)になると、月に何度もクリニックに通う必要が出てきます。

日本産科婦人科学会の報告によると、体外受精の1周期あたりの通院回数は平均5〜10回程度とされています。しかも「次は明後日来てください」「排卵が近いので明日来てください」といった急な予定変更が起こりやすく、仕事のスケジュール調整が非常に難しいのが実情です。

「会議の日に限って通院日が重なる」「午前中に受診してから出勤すると遅刻扱いになる」——こうした板挟み状態が、大きなストレスの原因になっています。

「言えない」ことによる孤独感

妊活や不妊治療は非常にプライベートなことです。職場の上司や同僚に伝えることに抵抗を感じる方は少なくありません。NPO法人Fineの調査では、職場に不妊治療のことを伝えていない人が約半数にのぼるという結果が出ています。

誰にも言えないまま、体調が優れなくても笑顔で仕事をこなし、急な休みの理由をうまくごまかす——この「隠し続けるストレス」は、想像以上にメンタルを消耗させます。

ホルモン治療による心身の変化

妊活中、特に不妊治療を受けている方は、ホルモン剤の使用による副作用を経験することがあります。お腹の張り、頭痛、眠気、そして気分の浮き沈みなど——こうした身体的な不調を抱えながら仕事のパフォーマンスを維持するのは、本当に大変なことです。

「薬の影響で集中力が落ちているけど、周りに悟られたくない」という気持ちが、さらにプレッシャーを増加させてしまいます。

結果が出ない焦りと自己否定

妊活は「頑張れば必ず結果が出る」というものではありません。リセット(生理が来ること)のたびに味わう落胆、「今月もダメだった」という焦り——これは仕事のストレスとは全く異なる種類の精神的負担です。

日本生殖医学会によると、35歳以上の女性の場合、体外受精1回あたりの妊娠率は約20〜35%とされています。つまり、何回かの治療を経て初めて妊娠に至るケースも珍しくありません。この「いつ終わるかわからない」という不確実性が、メンタルに大きな影響を与えます。

妊活と仕事の両立に関するデータ・現状

妊活と仕事の両立がどれほど大きな社会課題であるかを、具体的なデータで確認しておきましょう。「自分だけがつらいわけではない」と知ることで、少し気持ちが楽になることもあります。

不妊治療と仕事に関する調査結果

調査項目 結果 出典
不妊治療と仕事の両立が難しいと感じた割合 約96% NPO法人Fine調査(2018年)
不妊治療のために退職した割合 約16% 厚生労働省調査(2017年)
雇用形態を変更した割合 約8% 厚生労働省調査(2017年)
不妊治療中にストレスを感じた割合 約90%以上 各種クリニック調査
体外受精の実施件数(年間) 約49万件以上 日本産科婦人科学会(2021年データ)
不妊治療を受けたことがあるカップル 約5.5組に1組 国立社会保障・人口問題研究所(2021年)

これらのデータからも明らかなように、妊活と仕事の両立は非常に多くの方が直面している課題です。決してあなただけの悩みではありません。

2022年の保険適用拡大がもたらした変化

2022年4月から不妊治療の保険適用範囲が拡大され、体外受精や顕微授精にも公的医療保険が使えるようになりました。これにより経済的な負担は軽減された一方で、「治療を受けやすくなった分、仕事との調整がさらに増えた」という声もあります。

厚生労働省も「不妊治療と仕事の両立支援」を重要施策として位置づけ、企業向けのガイドラインや支援ツールの整備を進めています。社会全体として両立を支える流れが少しずつ広がっていることは、ポジティブな変化と言えるでしょう。

【方法1〜3】妊活と仕事を両立するための「仕事スタイルの見直し」

ここからは、妊活と仕事を両立するための具体的な方法を、7つに分けてご紹介します。まずは「仕事のスタイルそのものを見直す」ことから始めましょう。

方法1:フレックスタイム・時差出勤を活用する

不妊治療の通院は午前中になることが多いため、フレックスタイム制度や時差出勤が使える職場であれば、積極的に活用しましょう。

たとえば、朝9時にクリニックを受診し、11時から出勤する——というスケジュールが組めれば、有給休暇を使わずに通院できるケースもあります。

✅ 確認しておきたいポイント

  • 自社にフレックスタイム制度はあるか?
  • コアタイム(必ず出勤すべき時間帯)は何時から何時か?
  • 時差出勤の申請方法と条件は?
  • 在宅勤務(テレワーク)は可能か?

制度はあるのに使ったことがない、という方も意外と多いものです。人事部や就業規則を確認してみることをおすすめします。

方法2:通院しやすいクリニックを選ぶ

仕事との両立を考えるなら、クリニック選びも重要なポイントです。以下の観点で検討してみましょう。

  • 立地:職場や自宅からアクセスしやすい場所にあるか
  • 診療時間:早朝・夜間・土日の診療はあるか
  • 予約システム:当日予約やオンライン予約が可能か
  • 待ち時間:予約制で待ち時間が少ないか

最近では、仕事をしながら通院する患者さんのために、朝7時台から診療を開始するクリニックや、夜20時まで受付しているクリニックも増えています。転院を検討することに罪悪感を覚える方もいらっしゃいますが、両立のために環境を整えることは決して悪いことではありません。

方法3:仕事のタスク管理を「妊活仕様」に変える

妊活中は、急な通院や体調不良で予定が変わることが多いため、「突発的な休みに対応できる働き方」を日頃から意識しておくと安心です。

  1. タスクの見える化:自分の仕事の進捗を、チームメンバーがいつでも確認できるようにしておく
  2. 業務マニュアルの作成:自分が急に休んでも他の人が対応できるよう、手順書を準備しておく
  3. 前倒しの習慣:締め切りギリギリではなく、余裕を持ったスケジュールで仕事を進める
  4. 優先順位の明確化:「今日絶対にやるべきこと」と「明日でもいいこと」を毎朝区別する

こうした工夫は妊活に限らず、ビジネスパーソンとしてのスキルアップにもつながります。「妊活のために仕事の質が下がった」のではなく、「妊活をきっかけに、より効率的な働き方ができるようになった」と捉えることもできるかもしれません。

【方法4〜5】妊活と仕事を両立するための「職場との関係づくり」

仕事スタイルの見直しと並んで重要なのが、職場の人たちとの関係づくりです。「伝えるか、伝えないか」は、多くの方が最も悩むポイントでしょう。

方法4:職場への伝え方——伝えるメリット・伝えないメリット

妊活のことを職場に伝えるかどうかは、正解がひとつではない、とても個人的な判断です。それぞれのメリット・デメリットを整理してみましょう。

伝える場合 伝えない場合
メリット ・通院のための休みが取りやすくなる
・急な予定変更への理解が得やすい
・「隠し続ける」ストレスから解放される
・利用できる社内制度を案内してもらえる
・プライバシーが守られる
・不必要な詮索や同情を避けられる
・自分のペースで妊活に向き合える
・結果報告のプレッシャーがない
デメリット ・望まないアドバイスや質問を受ける可能性
・「またか」と思われることへの不安
・結果について聞かれるストレス
・休みの理由を説明しにくい
・急な予定変更のたびに嘘をつくストレス
・「サボっている」と誤解される可能性

「全員に伝える」か「誰にも伝えない」かの二択ではない、ということも覚えておいてください。「直属の上司にだけ伝える」「信頼できる同僚一人にだけ打ち明ける」など、段階的に開示範囲を決めるのもひとつの方法です。

伝えるときのポイント

もし伝えることを選んだ場合は、以下のポイントを意識すると、スムーズにコミュニケーションが取れるでしょう。

  1. 何を伝えるかを事前に整理する:「不妊治療をしていて、月に数回通院が必要です」程度で十分です。治療の詳細まで話す必要はありません
  2. 具体的な配慮をお願いする:「月に○回程度、午前中に2〜3時間の休みをいただきたい」など
  3. 仕事への影響を最小限にする姿勢を見せる:「業務に支障が出ないよう、○○の対策をしています」
  4. 周囲に広めないでほしい場合はその旨を伝える:「このことは他の方にはお話ししていないので、ご配慮いただけると助かります」

方法5:「不妊治療連絡カード」を活用する

あまり知られていませんが、厚生労働省が作成した「不妊治療連絡カード」という公式ツールがあります。これは、不妊治療中であることを主治医が記入し、それを職場に提示することで、通院への配慮をお願いしやすくするためのものです。

口頭で伝えにくい内容を、公的な文書として提示できるため、「言い出しにくいけど、配慮はしてほしい」という方にとって心強いツールです。

📋 不妊治療連絡カードの入手方法

  • 厚生労働省のWebサイトからダウンロード可能
  • 通院先のクリニックでも取り扱っている場合がある
  • 記入は主治医が行い、職場の上司や人事担当者に提示する

「カードを出すことで逆に気まずくなるのでは…」と心配される方もいますが、これはあくまでコミュニケーションの「きっかけ」として活用するものです。直接話すよりも冷静に、必要な情報だけを伝えられるというメリットがあります。

【方法6〜7】妊活と仕事を両立するための「メンタルセルフケア」

妊活と仕事の両立において、最も大切で、最も見落とされがちなのがメンタルケアです。どんなに制度が整っていても、心がすり減ってしまっては続けられません。

方法6:ストレスと妊活の関係を正しく理解する

「ストレスをためると妊娠しにくくなる」——こんな話を聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。実際、ストレスと妊孕性(妊娠する力)の関係については、さまざまな研究が行われています。

2014年にアメリカの学術誌「Human Reproduction」に発表された研究では、ストレスマーカー(唾液中のアルファアミラーゼ)が高い女性は、そうでない女性に比べて妊娠までの期間が29%長くなるという結果が報告されています。

ただし、ここで注意していただきたいのは、「ストレスがあるから妊娠できない」というほど単純な話ではないということです。「ストレスをなくさなきゃ」と思うこと自体が新たなストレスになってしまっては本末転倒です。

大切なのは、「ストレスをゼロにする」のではなく、「ストレスとうまく付き合う方法を見つける」という考え方です。

方法7:今日からできるメンタルケアの実践法

具体的にどんなセルフケアが有効なのか、エビデンスに基づいた方法をご紹介します。

① マインドフルネス・瞑想

2015年にアメリカの「Fertility and Sterility」誌に掲載された研究では、マインドフルネスベースのストレス軽減プログラム(MBSR)を受けた不妊治療中の女性は、不安やうつ症状が有意に改善したと報告されています。

難しく考える必要はありません。1日5分、静かに座って呼吸に意識を向けるだけでも効果があるとされています。通勤電車の中や、就寝前のベッドの上でもできます。

② 適度な運動

ウォーキングやヨガなどの軽い運動は、ストレスホルモン(コルチゾール)の分泌を抑え、セロトニン(幸せホルモン)の分泌を促すことが知られています。日本生殖医学会も、過度でない適度な運動は妊活中の女性にとって有益であるとしています。

ポイントは「激しすぎない」こと。週に3〜4回、30分程度のウォーキングやストレッチで十分です。「運動しなきゃ」と義務にするのではなく、「気分転換になるから歩こう」くらいの気持ちで始めてみてください。

③ 「妊活以外の時間」を意識的に作る

妊活中は、どうしても頭の中が「妊活一色」になりがちです。基礎体温、排卵日、通院日、リセット——24時間妊活のことを考え続けるのは、心にとって非常に大きな負担です。

意識的に「妊活から離れる時間」を作ることが大切です。

  • 好きな映画やドラマを観る
  • 友人とおいしいものを食べに行く
  • 趣味に没頭する時間を週に1回は設ける
  • パートナーと「妊活以外の話」をする日を決める

「妊活中なのに遊んでいていいのかな…」と罪悪感を覚える方もいるかもしれません。でも、心にゆとりを作ることは、結果的に妊活にとってもプラスに働きます。自分を楽しませることを、どうか許してあげてください。

④ 専門家のサポートを受ける

「自分だけではどうにもならない」と感じたら、専門家の力を借りることも大切な選択肢です。

  • 生殖心理カウンセラー:不妊治療専門のカウンセラーで、治療中の心理的サポートを行います
  • 臨床心理士・公認心理師:メンタルヘルス全般の相談ができます
  • 不妊ピアカウンセラー:自身も不妊治療の経験がある方が、当事者の立場で話を聞いてくれます

日本では、不妊治療施設の中に心理カウンセラーが常駐しているクリニックも増えてきています。「カウンセリングを受ける=心が弱い」ということでは決してありません。むしろ、自分の心を大切にするための積極的な行動です。

妊活と仕事の両立を支える公的制度・支援策

「知らなかった」では損をしてしまうかもしれない、妊活・不妊治療中の方が利用できる制度をまとめました。

不妊治療の保険適用(2022年4月〜)

2022年4月から、これまで自費だった体外受精・顕微授精などの高度生殖補助医療にも公的医療保険が適用されるようになりました。

  • 対象:タイミング法、人工授精、体外受精、顕微授精など
  • 年齢制限:治療開始時に女性が43歳未満であること
  • 回数制限:40歳未満は1子あたり6回まで、40〜43歳未満は3回まで
  • 自己負担:原則3割負担(高額療養費制度も利用可能)

経済的な負担が軽減されたことで、「お金の心配を理由に仕事を続けざるを得ない」というプレッシャーも、以前に比べて緩和されている方がいるかもしれません。

企業の不妊治療支援制度

厚生労働省は企業に対して、不妊治療と仕事の両立支援を推進しています。以下のような制度を導入している企業が増えてきています。

制度の種類 内容
不妊治療休暇 通院のための特別休暇(有給または無給)
時短勤務・時差出勤 治療スケジュールに合わせた勤務時間の調整
テレワーク(在宅勤務) 通院日に自宅で仕事ができる制度
治療費補助 不妊治療費の一部を企業が負担
相談窓口の設置 人事部や外部カウンセラーへの相談制度

「うちの会社にはそんな制度ない」と思われるかもしれませんが、就業規則をよく読むと、実は「傷病休暇」や「通院休暇」が妊活にも使えるケースがあります。まずは人事部に確認してみることをおすすめします。

「くるみん」認定・「プラチナくるみん」認定

厚生労働省の「くるみん認定」制度では、2022年の改正により、不妊治療と仕事の両立支援が新たな認定基準に追加されました。自分の勤務先が「くるみん認定」企業かどうかを確認してみるのも、制度活用のヒントになるかもしれません。

自治体の助成制度

お住まいの自治体によっては、独自の不妊治療助成制度を設けている場合があります。保険適用後も、先進医療の一部をカバーする助成金が出る自治体も増えてきています。お住まいの市区町村のWebサイトや窓口で最新情報を確認してみてください。

「もう限界」と感じたときの選択肢

どんなに工夫しても、どんなに頑張っても、「もう限界だ」と感じる瞬間が来ることがあります。それは決して弱さではなく、心からのSOSサインです。

退職は「逃げ」ではない

「仕事を辞めたら妊活に専念できるかもしれない」「でも、辞めたらキャリアが途絶えてしまう」——この葛藤を抱えている方は少なくありません。

大前提として、退職は「逃げ」ではありません。自分の人生において何を優先するかは、あなた自身が決めることです。ただし、感情的に決断するのではなく、以下の点を冷静に考えてから判断することをおすすめします。

  • 経済的に治療を続けられるか(パートナーの収入、貯蓄、保険適用でのコスト試算)
  • 退職後の生活リズムをどう保つか(日中の過ごし方、孤独感への対処)
  • 妊活終了後の再就職の見通しはあるか
  • 「辞めれば妊娠できる」という過度な期待を抱いていないか

退職して妊活に専念したからといって、必ず妊娠できるわけではありません。また、仕事を辞めたことで「自分の居場所がない」「妊活だけの毎日が逆につらい」と感じる方もいます。パートナーや信頼できる人とよく話し合い、できれば専門のカウンセラーにも相談した上で判断されることをおすすめします。

働き方を変えるという選択

「フルタイム勤務」か「退職」かの二択ではなく、その間にもさまざまな選択肢があります。

  • パートタイムへの変更:勤務時間を減らして通院の余裕を作る
  • 派遣・契約社員への切り替え:勤務日数や時間の柔軟性を確保する
  • 在宅ワーク・フリーランスへの転身:場所や時間に縛られない働き方
  • 部署異動の相談:業務量やストレスが少ない部署への異動
  • 休職制度の利用:一時的に仕事を離れ、治療に集中する

どの選択も、あなたの人生をよりよくするための前向きな決断です。

心療内科・メンタルクリニックの受診も選択肢に

以下のような状態が続いている場合は、心療内科やメンタルクリニックの受診を検討してみてください。

⚠️ こんな症状が2週間以上続いたら要注意

  • 何をしても楽しめない・興味がわかない
  • 眠れない、または寝すぎてしまう
  • 食欲がない、または食べすぎてしまう
  • 理由もなく涙が出る
  • 仕事に行くのが極端につらい(身体が動かない)
  • 自分を責める気持ちが止まらない
  • 「消えてしまいたい」と思うことがある

これらの症状は、うつ病や適応障害のサインである可能性があります。我慢し続ける必要はありません。心の不調は、早期に対応すればするほど回復も早いとされています。必ず専門の医師にご相談ください。

妊活と仕事を両立した先輩たちの体験談

同じ道を歩んだ先輩たちの経験は、何よりの励みになるものです。ここでは、妊活と仕事の両立を経験された方々のエピソードを、体験談としてご紹介します(プライバシー保護のため、詳細は編集しています)。

ケース1:上司に伝えたことで楽になったAさん(33歳・事務職)

「最初は誰にも言えず、通院のたびに『体調不良』で早退していました。でも嘘をつき続けることがストレスで、思い切って上司に打ち明けました。すると、『何か配慮できることがあれば言ってね』と言ってもらえて、涙が出るほどホッとしました。その後はフレックスを使って午前中に通院し、午後から出勤するスタイルに。完全に両立できたわけではありませんが、一人で抱え込まなくなっただけで、心のゆとりが全然違いました。」

ケース2:転職を選んだBさん(37歳・営業職)

「営業職で外回りが多く、通院の時間が全く取れませんでした。有給もすぐに使い切ってしまい、限界を感じて転職を決意。テレワーク可能な事務職に転職した結果、通院との両立が格段に楽になりました。年収は下がりましたが、心の平穏を得られたのは大きかったです。転職活動中は不安でしたが、今は『あのとき動いてよかった』と思っています。」

ケース3:「伝えない」を選んだCさん(30歳・IT企業勤務)

「私は職場には伝えませんでした。IT企業でフレックスとリモートワークが使えたので、制度をフル活用して乗り切りました。伝えなかった理由は、まだ妊活を始めたばかりで、周囲に過度に心配されたくなかったから。結果的に、半年ほどで妊娠できたので伝えずに済みましたが、もし長引いていたら伝えていたかもしれません。どちらが正解かは、そのときの状況次第だと思います。」

三者三様のやり方ですが、共通しているのは「自分にとって最善の選択を、自分で決めた」ということ。他の人と比較するのではなく、あなたの状況に合った方法を見つけていくことが大切です。

まとめ:妊活と仕事の両立で大切なこと

この記事では、妊活と仕事の両立について、メンタルケアを中心にさまざまな視点からお伝えしてきました。最後に、特に大切なポイントを整理します。

📝 この記事の要点まとめ

  1. 妊活と仕事の両立が「つらい」のは当然のこと:約96%の方が困難を感じています。自分だけが弱いのではありません。
  2. 仕事のスタイルを「妊活仕様」に調整する:フレックス・時差出勤・タスクの前倒しなど、小さな工夫の積み重ねが大きな助けになります。
  3. 職場に伝えるかは「自分で決めていい」:伝える・伝えない、どちらにもメリットがあります。段階的な開示も選択肢のひとつです。
  4. メンタルケアは妊活の一部:ストレスと上手に付き合うこと、自分を楽しませる時間を作ることは、決して「さぼり」ではありません。
  5. 「限界」を感じたら助けを求めてよい:退職・転職・働き方の変更・専門家への相談——選択肢はたくさんあります。一人で抱え込まないでください。

妊活と仕事の両立には「これが正解」という唯一の答えはありません。でも、あなたが自分の心と身体を大切にしながら、自分なりのバランスを見つけていくこと——それ自体が、とても尊いことだと思います。

この記事が、少しでもあなたの心を軽くするきっかけになれば幸いです。

よくある質問(FAQ)

Q1. 妊活と仕事の両立でストレスがたまっています。ストレスは妊娠に影響しますか?

ストレスが妊孕性(妊娠する力)に影響する可能性は、複数の研究で示唆されています。2014年の「Human Reproduction」誌の研究では、ストレスレベルが高い女性は妊娠までの期間が約29%長くなるという報告があります。ただし、ストレスがあるから妊娠できないというほど単純ではありません。「ストレスをゼロにしなければ」と思い詰めることが逆効果になることもあります。マインドフルネスや適度な運動など、自分に合ったストレス対処法を見つけることが大切です。強いストレスが続く場合は、心療内科やカウンセラーへの相談も検討してみてください。

Q2. 不妊治療のことを職場の上司にどう伝えたらいいですか?

伝える場合は、治療の詳細ではなく「通院のために月に○回程度、数時間の休みが必要です」という具体的なお願い事項を中心に伝えるのがポイントです。また、厚生労働省が作成した「不妊治療連絡カード」を活用すると、口頭では伝えにくい内容を文書として提示でき、スムーズにコミュニケーションが取れる場合があります。なお、伝えるかどうかは個人の自由です。プライバシーを守りたい場合は、無理に伝える必要はありません。

Q3. 不妊治療と仕事の両立が辛くて退職を考えています。辞めるべきでしょうか?

退職は決して「逃げ」ではなく、正当な選択肢のひとつです。ただし、感情的に決めるのではなく、経済面(パートナーの収入、貯蓄、治療費の見通し)、退職後の生活リズム、再就職の可能性などを冷静に整理してから判断されることをおすすめします。また、フルタイムか退職かの二択ではなく、パートタイムへの変更、部署異動、休職など、中間的な選択肢も検討してみてください。パートナーや専門のカウンセラーとよく話し合うことが大切です。

Q4. 不妊治療のための休暇制度はありますか?

法律で定められた「不妊治療専用の休暇」は現時点ではありませんが、企業独自の制度として「不妊治療休暇」を設けている会社が増えています。厚生労働省も企業に対して両立支援制度の導入を推進しています。まずは自社の就業規則を確認するか、人事部に相談してみてください。また、有給休暇、半日休暇、時間単位の有給休暇なども活用できる場合があります。「くるみん認定」企業は、不妊治療への配慮がある可能性が高いので、転職を検討する際の参考にもなります。

Q5. 体外受精の通院頻度はどのくらいですか?仕事と両立できますか?

体外受精の1周期あたりの通院回数は、一般的に5〜10回程度とされています。特に卵巣刺激から採卵までの期間は、2〜3日おきの通院が必要になることもあります。フレックスタイムや時差出勤が使える職場であれば両立しやすくなります。また、早朝や夜間に診療しているクリニックを選ぶことも有効です。通院が集中する時期は、事前に業務の調整をしておくと安心です。

Q6. 妊活中、職場で「子どもはまだ?」と聞かれるのがつらいです。どう対処すべきですか?

このような質問は、悪意がなくても心に深く刺さるものです。対処法としては、①「そういうのはちょっと答えにくいです」と穏やかに境界線を引く、②「いろいろタイミングもありますので」とやんわり流す、③信頼できる同僚に「聞かれるのがつらい」と打ち明けて間接的に周囲に伝えてもらう、などの方法があります。無理に笑顔で答える必要はありません。あなたのプライバシーは守られるべきものです。つらい気持ちが続く場合は、カウンセラーに相談することも検討してみてください。

Q7. 不妊治療の保険適用はどのような内容ですか?経済的な不安を減らすために知っておくべきことは?

2022年4月から、タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などの不妊治療に公的医療保険が適用されるようになりました。自己負担は原則3割です。ただし、治療開始時に女性が43歳未満であること、回数制限(40歳未満は6回、40〜43歳未満は3回)があることにご注意ください。さらに、高額療養費制度を利用すれば、月ごとの自己負担に上限が設けられます。お住まいの自治体独自の助成金制度もある場合がありますので、市区町村の窓口やWebサイトで確認されることをおすすめします。

Q8. パートナーとの関係がギクシャクしています。妊活中のパートナーシップを保つコツはありますか?

妊活はカップル二人の問題ですが、温度差が生じやすいのも事実です。パートナーシップを保つコツとしては、①定期的に「妊活について話す時間」を設ける(逆に「話さない日」も決める)、②治療の情報をパートナーと共有する(一緒にクリニックの説明を聞くなど)、③妊活以外の楽しみを二人で持つ、④お互いの気持ちを「責める」のではなく「聞く」姿勢を大切にする、などが挙げられます。カップルカウンセリングを受けることも有効な方法です。二人の関係が良好であることは、妊活を続ける上でとても大きな支えになります。

Q9. 妊活中のメンタルケアとして、カウンセリングは効果がありますか?どこで受けられますか?

はい、カウンセリングの効果は複数の研究で示されています。2015年の「Fertility and Sterility」誌の研究では、心理的介入を受けた不妊治療中の女性は、不安やうつ症状が有意に改善したと報告されています。カウンセリングを受けられる場所としては、①不妊治療クリニック内に常駐する生殖心理カウンセラー、②NPO法人Fineなどの不妊当事者支援団体が提供するピアカウンセリング、③地域の心療内科・メンタルクリニック、④オンラインカウンセリングサービスなどがあります。「まだ大丈夫」と思っているうちに相談しておくことが、心の健康を守るポイントです。

Q10. 妊活と仕事を両立するために、パートナーができるサポートはありますか?

パートナーのサポートは、妊活と仕事の両立において非常に大きな力になります。具体的には、①通院の送迎や付き添い(可能な範囲で)、②家事の分担を見直す(妊活中は体力的にも精神的にもつらい時期があります)、③治療に関する情報収集を一緒に行う、④「がんばって」ではなく「一緒にやっていこう」という姿勢で寄り添う、⑤パートナー自身も検査を受ける(男性不妊は不妊原因の約半数を占めるとされています)、などが挙げられます。妊活は二人三脚で取り組むものであるという意識を共有することが大切です。

【参考情報】

  • 日本生殖医学会「生殖医療ガイドライン」
    https://www.jsrm.or.jp/
  • 厚生労働省「不妊治療と仕事の両立のために」
    https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_14408.html
  • 厚生労働省「不妊治療連絡カード」
    https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/pamphlet/30.html
  • NPO法人Fine「不妊治療と仕事の両立に関するアンケート」
    https://j-fine.jp/
  • 国立社会保障・人口問題研究所「出生動向基本調査」
    https://www.ipss.go.jp/
  • Lynch CD, et al. “Preconception stress increases the risk of infertility.” Human Reproduction, 2014.
  • Domar AD, et al. “Impact of a group mind/body intervention on pregnancy rates in IVF patients.” Fertility and Sterility, 2011.
  • 日本産科婦人科学会 ART データブック
    https://www.jsog.or.jp/

※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の医療行為を推奨するものではありません。治療に関する判断は、必ず担当の医師にご相談ください。

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