この記事の監修・執筆方針
本記事は、妊活・不妊治療に関する医学的エビデンス(査読済み論文・学会ガイドライン・厚生労働省の公表資料等)に基づいて執筆しています。DHA・EPAと妊活の関連について、国内外の研究データを引用しながら、できる限り正確でわかりやすい情報をお届けすることを目指しています。ただし、本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の医療行為やサプリメントの使用を推奨するものではありません。個別の判断については、必ずかかりつけの医師や専門家にご相談ください。
「妊活を始めたけれど、DHA・EPAって本当に必要なの?」「魚に含まれるオメガ3脂肪酸が妊活に良いと聞いたけれど、具体的にどう良いの?」——そんな疑問をお持ちではありませんか。
妊活中の栄養管理といえば、まず葉酸を思い浮かべる方が多いかもしれません。もちろん葉酸はとても大切ですが、近年の研究ではDHA・EPAなどのオメガ3脂肪酸が妊活において重要な役割を果たすことが次々と報告されています。卵子の質、ホルモンバランス、子宮内膜の環境——DHA・EPAはこれらに幅広く関わっているとされているのです。
しかし、日本人女性のオメガ3脂肪酸の摂取量は、近年の食生活の変化にともない減少傾向にあると言われています。「魚を毎日食べるのは難しい…」「サプリで摂るならどれを選べばいいの?」という声も多く聞かれます。
この記事では、DHA・EPAが妊活にどのように役立つのかを、最新の研究データをもとにわかりやすく解説します。1日にどのくらい摂ればいいのか、食事とサプリメントの上手な使い分け、そして注意すべきポイントまで、妊活中の方が「今日から実践できる」情報を網羅しました。ぜひ最後まで読んで、日々の妊活にお役立てください。
この記事でわかること
- DHA・EPAとは何か、妊活との関係の基本
- DHA・EPAが卵子の質・ホルモンバランス・子宮内膜に与える影響(研究データ付き)
- 妊活中に必要なDHA・EPAの1日摂取目安量と効果的な摂り方
- DHA・EPAが豊富な食材一覧とおすすめレシピのヒント
- サプリメントの選び方・注意点と、医師に相談すべきタイミング
DHA・EPAとは?妊活に注目される理由
DHA・EPAの基本——オメガ3脂肪酸ってなに?
DHA(ドコサヘキサエン酸)とEPA(エイコサペンタエン酸)は、「オメガ3脂肪酸」と呼ばれる多価不飽和脂肪酸の一種です。「体に良い脂」として知られ、青魚(サバ、イワシ、サンマなど)に多く含まれています。
オメガ3脂肪酸は体内でほとんど合成できない「必須脂肪酸」であり、食事やサプリメントから摂取する必要があります。DHAとEPAにはそれぞれ少し異なる特徴があります。
| 項目 | DHA(ドコサヘキサエン酸) | EPA(エイコサペンタエン酸) |
|---|---|---|
| 主な役割 | 脳・神経・細胞膜の構成成分 | 血液の流れを良くする・炎症を抑える |
| 多い食材 | マグロ、ブリ、サバ、サンマ | イワシ、サバ、アジ、サンマ |
| 妊活との関連 | 卵子・胎児の発育に深く関与 | 子宮内膜の血流改善・炎症抑制に関与 |
近年、この2つの栄養素が妊娠力に深く関わることが多くの研究で明らかになってきました。DHA・EPAは妊活において、葉酸や鉄分と同じくらい注目すべき栄養素と言えるでしょう。
なぜ今、妊活でDHA・EPAが注目されているのか
厚生労働省の「国民健康・栄養調査」によると、日本人の魚介類の摂取量は2001年をピークに減少し続けています。特に20〜40代の女性では、1日あたりの魚介類摂取量は約60g前後と、推奨される量を下回っているとされています。
一方、オメガ6脂肪酸(サラダ油やマヨネーズなどに多い)の摂取量は増加傾向にあります。オメガ3とオメガ6のバランスが崩れると、体内で炎症が起きやすくなり、妊活にとってマイナスに働く可能性があると指摘されています。
「食事には気をつけているつもりなのに、なかなか結果が出ない…」と感じている方は、もしかするとオメガ3脂肪酸が不足しているかもしれません。次の章では、DHA・EPAが妊活にどのように役立つのか、具体的な研究データとともに詳しく見ていきましょう。
DHA・EPAが妊活に重要な5つの理由【研究データで解説】
理由①:卵子の質を高める可能性がある
妊活において最も気になるポイントの一つが「卵子の質」ではないでしょうか。年齢とともに卵子の質が低下すると言われていますが、DHA・EPAはこの卵子の質に良い影響を与える可能性が報告されています。
2018年に医学誌「Human Reproduction」に掲載された研究では、オメガ3脂肪酸の血中濃度が高い女性は、体外受精(IVF)における良質な胚盤胞(はいばんほう)の形成率が有意に高かったと報告されています。
また、ハーバード大学公衆衛生大学院の研究チームが行った「EARTH Study」(環境と生殖の健康に関する大規模前向き研究)では、魚やオメガ3脂肪酸の摂取量が多い女性ほど、妊娠率が高い傾向があることが示されました。
DHA・EPAは細胞膜の柔軟性を高める働きがあり、これが卵子の成熟や受精能力にプラスに作用すると考えられています。
理由②:ホルモンバランスの調整をサポート
妊娠には、エストロゲン(卵胞ホルモン)やプロゲステロン(黄体ホルモン)などのホルモンが適切に分泌されることが欠かせません。DHA・EPAは、これらのホルモンの「材料」となる脂質の一種であり、ホルモンの合成や調節に関わっているとされています。
2012年に「Fertility and Sterility」誌に発表された研究では、オメガ3脂肪酸の補給により、排卵を促すホルモン(LH:黄体形成ホルモン)の分泌パターンが改善された可能性が示唆されています。
「基礎体温が安定しない」「排卵日がわかりにくい」といったお悩みをお持ちの方は、ホルモンバランスの乱れが一因かもしれません。DHA・EPAの十分な摂取が、こうした悩みの軽減に役立つ可能性があります。
理由③:子宮内膜の環境を整える
受精卵が着床するためには、子宮内膜が十分な厚さを持ち、血流が良い状態であることが重要です。EPAには血液の流れを良くする作用があり、子宮内膜への血流改善が期待されています。
また、オメガ3脂肪酸には抗炎症作用があるため、子宮内膜の慢性的な炎症(慢性子宮内膜炎)を抑える働きも注目されています。慢性子宮内膜炎は不妊の原因の一つとして近年研究が進んでいる分野で、適切な栄養摂取がその予防や改善に寄与する可能性があるとされています。
「内膜が薄いと言われた」「着床がうまくいかない」という経験をされた方にとって、DHA・EPAは意識して摂りたい栄養素の一つと言えるかもしれません。
理由④:炎症を抑えて妊娠しやすい体づくりに貢献
体内の慢性的な炎症は、妊娠力に悪影響を与えることが知られています。子宮内膜症、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)、卵管障害など、不妊の原因となる多くの疾患には「慢性炎症」が関わっているとされています。
DHA・EPAから体内で生成される「レゾルビン」や「プロテクチン」と呼ばれる物質は、炎症を積極的に収束させる働き(炎症収束作用)があることが近年の研究で明らかになっています。
2016年に「Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism」に掲載された研究では、PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)の女性がオメガ3脂肪酸を12週間摂取したところ、炎症マーカー(CRP)の値が有意に低下したと報告されています。
PCOSは妊活中の女性に比較的多い疾患で、「なかなか排卵しない」「生理周期が不規則」という方も少なくありません。DHA・EPAによる炎症の抑制は、こうした方にとって特に注目すべきポイントです。
理由⑤:男性の精子の質にも良い影響が期待される
妊活は女性だけのものではありません。WHO(世界保健機関)の報告によると、不妊カップルの約半数には男性側の要因も関わっているとされています。DHA・EPAは、男性の妊活にも重要な役割を果たす可能性があります。
DHAは精子の細胞膜に多く含まれる成分であり、精子の運動性や形態に影響を与えることが複数の研究で報告されています。2010年に「Biology of Reproduction」誌に掲載された研究では、DHA濃度が高い精子は運動率や正常形態率が高い傾向があることが示されました。
2019年のメタアナリシス(複数の研究を統合した分析)でも、オメガ3脂肪酸の補給が男性の精液パラメーター(精子濃度・運動率)を改善する可能性があると報告されています。
パートナーと一緒にDHA・EPAを意識した食生活に取り組むことで、カップルとしての妊娠力を高められるかもしれません。
妊活中に必要なDHA・EPAの摂取量はどのくらい?
厚生労働省・学会が推奨する摂取目安量
「DHA・EPAが大切なのはわかったけれど、具体的にどのくらい摂ればいいの?」という疑問にお答えしましょう。
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、オメガ3脂肪酸(n-3系脂肪酸)の目安量は、成人女性で1日あたり1.6〜2.0gとされています。これにはDHA・EPAだけでなく、α-リノレン酸(植物性のオメガ3)も含まれます。
DHA・EPAに限った具体的な推奨量について、日本では公的な数値は設定されていませんが、以下の目安が参考になります。
| 機関・ガイドライン | 推奨されるDHA+EPA摂取量 |
|---|---|
| 厚生労働省(n-3系脂肪酸全体) | 1日1.6〜2.0g(20〜40代女性) |
| 米国心臓協会(AHA) | 1日250〜500mg(DHA+EPA)を一般成人に推奨 |
| WHO(世界保健機関) | 妊娠中は1日200mg以上のDHAを推奨 |
| 国際脂肪酸・脂質学会(ISSFAL) | 妊娠期・授乳期は1日300mg以上のDHA+EPAを推奨 |
妊活中の方は、1日あたりDHA・EPAを合わせて500mg〜1,000mg程度を目安にすると良いとされることが多いです。ただし、個人の体調や治療状況によって適切な量は異なりますので、具体的な量については医師や管理栄養士にご相談ください。
現代女性のDHA・EPA摂取量の現実
残念ながら、多くの日本人女性は十分なDHA・EPAを摂取できていないのが現実です。厚生労働省の「国民健康・栄養調査」のデータを見ると、20〜30代の女性における魚介類の1日あたりの平均摂取量は約60〜70gとなっており、これはDHA・EPAに換算すると約200〜400mg程度にとどまると推定されます。
つまり、妊活中に望ましいとされる量には不足している方が多いと考えられます。特に、以下のような方はDHA・EPA不足のリスクが高い可能性があります。
- 魚をあまり食べない(週2回未満)
- 外食やコンビニ食が多い
- 肉中心の食生活
- ダイエットで脂質を極端にカットしている
- 揚げ物やスナック菓子をよく食べる(オメガ6過多になりやすい)
心当たりのある方は、意識的にDHA・EPAの摂取量を増やす工夫をしてみましょう。
オメガ3とオメガ6のバランスが大切
DHA・EPAの「量」だけでなく、「バランス」も重要です。オメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸の理想的な比率は1:2〜1:4とされていますが、現代の食生活では1:10〜1:20にまで偏っていることも珍しくありません。
オメガ6が過剰になると、体内で炎症を促進する物質(プロスタグランジンE2など)が多く作られ、妊活にとって不利な体内環境になりやすいと言われています。DHA・EPAを増やすとともに、サラダ油やマーガリンなどのオメガ6を減らす意識も持つと、より効果的です。
DHA・EPAが豊富な食材と妊活中におすすめの食べ方
DHA・EPAを多く含む食材ランキング
DHA・EPAは主に青魚に多く含まれています。食材100gあたりのDHA・EPA含有量の目安をまとめました。
| 食材(100gあたり) | DHA含有量 | EPA含有量 | DHA+EPA合計 |
|---|---|---|---|
| マグロ(トロ・脂身) | 約2,900mg | 約1,400mg | 約4,300mg |
| サバ(真さば) | 約1,800mg | 約1,200mg | 約3,000mg |
| サンマ | 約1,700mg | 約900mg | 約2,600mg |
| ブリ | 約1,700mg | 約900mg | 約2,600mg |
| イワシ | 約1,100mg | 約1,400mg | 約2,500mg |
| アジ | 約600mg | 約400mg | 約1,000mg |
| サケ(紅鮭) | 約500mg | 約300mg | 約800mg |
| ツナ缶(水煮) | 約100〜300mg | 約30〜100mg | 約130〜400mg |
※含有量は季節や部位により変動します。文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」を参考にした概算値です。
このデータを見ると、サバやイワシなら1切れ(約80〜100g)で1日の目安量を十分に満たせることがわかります。手軽に摂れる缶詰も活用したいですね。
妊活中の魚の食べ方——水銀リスクへの対策
「魚は水銀が心配…」という方もいらっしゃるかもしれません。これは妊活中・妊娠中の方にとって重要なポイントです。
厚生労働省は、妊婦(妊娠の可能性のある方を含む)が注意すべき魚種とその目安量を公表しています。
水銀量に注意が必要な魚種(厚生労働省より)
- 特に注意が必要:キンメダイ、メカジキ、クロマグロ(本マグロ)、メバチマグロ → 週1回(約80g)まで
- やや注意が必要:キダイ、マカジキ、ミナミマグロ → 週2回(約160g)まで
- 通常の摂取で問題なし:サバ、イワシ、サンマ、アジ、サケ、ツナ缶(ビンナガマグロ)
※妊活中のDHA・EPA摂取には、サバ・イワシ・サンマ・アジ・サケなどの比較的小型の魚がおすすめです。
これらの魚は水銀含有量が少なく、DHA・EPAも豊富なので、安心して食卓に取り入れることができます。
効果的な調理法と食べ合わせのコツ
DHA・EPAは脂質の一種なので、調理法によって損失量が変わります。効果的に摂取するためのポイントをご紹介します。
- 刺身・お寿司が最も効率的:加熱による脂肪の流出がないため、DHA・EPAをそのまま摂取できます。
- 煮魚は煮汁ごと食べる:DHA・EPAは煮汁に溶け出すため、煮汁もいただくのがポイントです。
- 焼き魚は網焼きより蒸し焼きに:網焼きだと脂が約20%落ちるとされています。アルミホイルで包んで焼くと損失を抑えられます。
- 缶詰は汁ごと活用:サバ缶やイワシ缶の汁にもDHA・EPAが溶け出しているため、汁ごと料理に使うのがおすすめです。
- 揚げ物は避ける:高温の油で揚げるとDHA・EPAが酸化しやすく、また揚げ油のオメガ6を吸収してしまいバランスが崩れます。
忙しい妊活中の方におすすめの簡単メニュー
「毎日魚を調理する時間がない…」という方も多いですよね。そんな方のために、手軽にDHA・EPAを摂れるアイデアをご紹介します。
- サバ缶+味噌汁:サバの水煮缶を味噌汁にそのまま投入。10分で完成し、DHA・EPAが約1,500mg摂れます。
- ツナ缶+サラダ:ノンオイルのツナ缶とたっぷりの野菜で簡単サラダ。亜麻仁油ドレッシングをかければオメガ3がさらにアップ。
- イワシ缶+パスタ:イワシの蒲焼き缶をほぐしてパスタに。トマトソースとの相性も抜群です。
- 鮭フレーク+ごはん:毎日のごはんに鮭フレークをプラス。手軽にDHA・EPAを摂取できます。
「缶詰を常備しておく」だけで、DHA・EPA摂取のハードルがぐっと下がりますよ。
妊活中のDHA・EPAサプリメントの選び方5つのポイント
ポイント①:DHA・EPAの含有量を確認する
サプリメントを選ぶ際に最も重要なのは、1日あたりのDHA・EPA含有量です。「フィッシュオイル○○mg配合」と書かれていても、フィッシュオイルの全量がDHA・EPAというわけではありません。
必ず成分表示で「DHA ○○mg」「EPA ○○mg」と個別に表記されているものを選びましょう。妊活中の方は、DHA+EPAの合計が1日あたり500mg以上摂れる製品が目安となります。
ポイント②:酸化対策がされているか
DHA・EPAは非常に酸化しやすい成分です。酸化した脂肪酸は体にとって有害になる可能性があるため、以下のような酸化対策が施された製品を選ぶことが大切です。
- ビタミンE(トコフェロール)が酸化防止剤として配合されている
- 個別包装やアルミパウチなど遮光・密封パッケージが採用されている
- 製造後の品質管理がしっかりしているメーカーである
開封後は冷蔵庫で保管し、できるだけ早く使い切ることも大切です。カプセルを割ったときに「魚臭い」「酸っぱいにおいがする」場合は、酸化が進んでいるサインですので使用を控えましょう。
ポイント③:原料の品質と安全性
妊活中は特に、口にするものの安全性が気になりますよね。以下の点をチェックしましょう。
- 水銀・重金属の検査済み:第三者機関によるテスト結果を公表している製品が安心です。
- GMP認証工場で製造:GMP(Good Manufacturing Practice)は製造品質の国際基準です。
- 原料の由来が明記されている:「青魚由来」「クリルオイル(オキアミ由来)」など、原料が明確な製品を選びましょう。
ポイント④:トリグリセリド型かエチルエステル型か
DHA・EPAサプリメントには主に2つの形態があります。
| 形態 | 特徴 | 吸収率 |
|---|---|---|
| トリグリセリド(TG)型 | 天然の魚油に近い形。体への吸収率が高い | 高い |
| エチルエステル(EE)型 | 精製・濃縮された形。価格が比較的安価 | TG型よりやや低い |
| リン脂質型(クリルオイル) | オキアミ由来。水溶性が高く吸収が良い | 高い |
吸収率を重視するならトリグリセリド型やクリルオイルがおすすめですが、エチルエステル型でも食事と一緒に摂れば吸収率は向上するとされています。
ポイント⑤:葉酸など他の妊活栄養素との組み合わせ
妊活中はDHA・EPA以外にも、葉酸、鉄分、ビタミンD、亜鉛など、さまざまな栄養素が必要です。最近は、これらの栄養素をまとめて摂れる「妊活向けマルチサプリ」にDHA・EPAが含まれている製品もあります。
ただし、複合サプリではDHA・EPAの配合量が十分でないケースもあるので、含有量をよく確認することが大切です。不足分は単体のDHA・EPAサプリで補うのも一つの方法です。
大切なお知らせ:サプリメントはあくまで「補助」です。バランスの良い食事が基本であり、サプリメントだけで妊活に必要な栄養をすべてまかなうことはできません。また、サプリメントの摂取を開始する前に、必ず担当医にご相談ください。特に不妊治療中の方は、服用中の薬との相互作用がないか確認することが重要です。
DHA・EPAを妊活に活かすための注意点と副作用
摂りすぎによるリスクはある?
DHA・EPAは基本的に安全性の高い成分ですが、過剰摂取には注意が必要です。
欧州食品安全機関(EFSA)は、DHA+EPAの合計で1日5g以下であれば安全としていますが、一般的な食事とサプリメントの組み合わせでこの量を超えることはまれです。
ただし、以下のような症状が出る場合は摂取量を見直しましょう。
- 胃腸の不調(胃もたれ、お腹のゆるみ、げっぷ)
- 魚臭い体臭やげっぷ
- 出血しやすくなる(EPA は血液を凝固しにくくする作用があるため)
血液をサラサラにする薬を服用中の方は要注意
EPA には血小板の凝集を抑える作用があるため、ワルファリンやアスピリンなどの抗凝固薬・抗血小板薬を服用中の方は、DHA・EPAサプリメントの摂取前に必ず医師にご相談ください。
また、手術を控えている場合にも、出血リスクに影響する可能性があるため、事前に医師に伝えておきましょう。
アレルギーと原料の確認
魚アレルギーをお持ちの方は、魚油由来のDHA・EPAサプリメントでアレルギー反応が出る可能性があります。その場合は、藻類(微細藻類)由来のDHA・EPAサプリメントという選択肢もあります。藻類由来の製品は魚を原料としないため、魚アレルギーの方でも摂取できる場合があります(ただし、個別にアレルギー表示を確認してください)。
保存方法にも気を配ろう
DHA・EPAは光・熱・酸素に弱い成分です。サプリメントは以下の点に注意して保管しましょう。
- 直射日光を避け、涼しい場所(できれば冷蔵庫)に保管する
- 開封後はしっかりキャップを閉める
- 使用期限内に使い切る
- 異臭がしたら使用を中止する
不妊治療中のDHA・EPA摂取——体外受精・人工授精との関係
体外受精(IVF)とDHA・EPAの研究
不妊治療のステップアップとして体外受精を受けている方、またはこれから受けることを検討している方にとって、DHA・EPAの効果は特に気になるところではないでしょうか。
先述のハーバード大学「EARTH Study」では、体外受精を受けた女性約900人を対象に、食事からのオメガ3脂肪酸摂取量と治療成績の関連を調査しました。その結果、DHA・EPAの摂取量が上位4分の1のグループは、下位4分の1のグループと比べて、臨床妊娠率が約8%高く、出産率も有意に高かったと報告されています。
また、2018年の「Reproductive BioMedicine Online」に掲載された研究では、体外受精前にオメガ3脂肪酸のサプリメントを摂取した女性は、採卵数や受精率に有意な差は見られなかったものの、胚の質(グレード)が向上する傾向が報告されました。
これらの研究はまだ確定的な結論を出すには至っていませんが、DHA・EPAが体外受精の成績にプラスの影響を与える可能性は十分に示唆されています。
不妊治療中にDHA・EPAを摂るベストなタイミング
DHA・EPAは体内に蓄積されるまでに一定の期間がかかります。血中のオメガ3脂肪酸濃度が安定するまでには約4〜8週間かかるとされているため、体外受精の採卵周期に入る前から継続的に摂取することが望ましいと考えられています。
「来月から体外受精を始める予定」という方は、できるだけ早く(理想的には2〜3か月前から)DHA・EPAの摂取を意識し始めると良いでしょう。もちろん、今からでも遅くはありません。
- 不妊治療の開始が決まったら、DHA・EPAの摂取を意識し始める
- 食事で魚を週3〜4回取り入れることを目標にする
- 食事だけで不足する場合は、サプリメントの活用を医師に相談する
- 採卵・移植の周期に入っても、継続して摂取する(医師の許可のもと)
- 妊娠後もDHAは胎児の脳の発育に重要なので、引き続き摂取を継続する
不妊治療中の方が医師に相談すべきこと
不妊治療中のサプリメント摂取については、自己判断せずに必ず担当医に確認しましょう。特に以下の点は相談しておくと安心です。
- 現在の治療内容とサプリメントの相互作用がないか
- 服用中のホルモン剤への影響がないか
- 自分に適切な摂取量はどのくらいか
- 血液検査でオメガ3脂肪酸の値を測定できるか
「先生に聞くのは気が引ける…」と感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、栄養面のサポートも治療の一部です。遠慮せずに相談してみてくださいね。
まとめ:DHA・EPAで妊活をサポートするために
ここまで、DHA・EPAと妊活の関係について詳しく解説してきました。最後に、記事の要点を振り返りましょう。
この記事の要点
- DHA・EPAは妊活に多方面から貢献する:卵子の質向上、ホルモンバランスの調整、子宮内膜環境の改善、炎症の抑制、精子の質向上——5つの重要な役割が研究で示唆されています。
- 妊活中の摂取目安はDHA+EPAで1日500〜1,000mg:サバやイワシを1切れ食べれば十分に摂取可能です。缶詰を活用すれば、忙しい方でも手軽に取り入れられます。
- 食事が基本、不足分はサプリメントで補う:サプリメントを選ぶ際は、含有量・酸化対策・品質認証を確認し、必ず医師に相談してから摂取を始めましょう。
- 体外受精など不妊治療中の方も要注目:治療成績への好影響を示唆する研究が増えています。採卵の2〜3か月前からの摂取がおすすめです。
- パートナーと一緒に取り組む妊活栄養:DHA・EPAは男性の精子の質にも関わるため、二人で魚中心の食生活を心がけることで、カップルとしての妊娠力向上が期待できます。
妊活は身体的にも精神的にも大変な取り組みです。「こんなに頑張っているのに…」と、つらくなることもあるかもしれません。でも、毎日の食事を少し見直すだけで、体の内側から妊娠に向けた準備を進めることができます。
DHA・EPAの摂取は、その中でも比較的取り入れやすい方法の一つです。今日の夕食に魚を一品加えてみる——そんな小さな一歩から始めてみてはいかがでしょうか。
あなたの妊活が、良い結果につながることを心から願っています。
よくある質問(FAQ)
Q1. DHA・EPAは妊活中のどの段階から摂り始めればいいですか?
DHA・EPAは、妊活を始めたらすぐに意識して摂り始めることをおすすめします。血中のオメガ3脂肪酸濃度が安定するまでに約4〜8週間かかるとされているため、妊活開始の2〜3か月前から摂取を始めるのが理想的です。体外受精を予定している方は、採卵周期に入る前から継続的に摂取するとよいとされています。もちろん、「今日から始めても遅い」ということはありません。
Q2. DHA・EPAのサプリメントと葉酸サプリは一緒に飲んでも大丈夫ですか?
一般的に、DHA・EPAのサプリメントと葉酸サプリメントを併用しても問題ないとされています。実際、妊活向けに両方の成分を配合した複合サプリも多数販売されています。ただし、複数のサプリメントを併用する場合は、成分の重複による過剰摂取がないかを確認しましょう。不安な場合は、かかりつけの医師や薬剤師に相談してください。
Q3. 妊活中に魚を食べる場合、水銀の影響は心配ないですか?
水銀の蓄積量が比較的多いのは、マグロ(特にクロマグロ・メバチマグロ)、メカジキ、キンメダイなどの大型魚です。サバ、イワシ、サンマ、アジ、サケなどの比較的小型の魚は、水銀含有量が少なく、厚生労働省も通常の範囲での摂取には問題がないとしています。DHA・EPAを摂取するなら、これらの小型〜中型の青魚を中心に食べることで、水銀リスクを最小限に抑えながら栄養を摂ることができます。
Q4. 魚が苦手です。DHA・EPAをサプリ以外で摂る方法はありますか?
DHA・EPAの直接的な摂取源は主に魚介類ですが、以下のような方法もあります。
- 亜麻仁油(フラックスシードオイル)・えごま油・チアシード:これらにはα-リノレン酸(ALA)というオメガ3脂肪酸が含まれており、体内でDHA・EPAに変換されます。ただし、変換率は約5〜15%と低いため、これだけでは十分な量を確保しにくい面があります。
- 藻類由来のDHA・EPAサプリメント:魚ではなく微細藻類から抽出されたDHA・EPAサプリメントがあります。魚の味やにおいが苦手な方、ベジタリアンの方にも適しています。
- DHA・EPA強化食品:DHA入りの卵、牛乳、ヨーグルトなどの機能性食品も活用できます。
Q5. DHA・EPAを摂りすぎるとどうなりますか?副作用はありますか?
DHA・EPAは安全性の高い成分ですが、過剰摂取では以下のような症状が出ることがあります。
- 胃もたれ、下痢、腹部の不快感
- 魚臭いげっぷ
- 出血しやすくなる(EPAの血液凝固抑制作用による)
欧州食品安全機関(EFSA)は、1日5g以下のDHA+EPA摂取であれば健康上のリスクは低いとしています。通常の食事とサプリメントの組み合わせでこの量を超えることはまれですが、大量のサプリメント摂取は避け、推奨量を守りましょう。
Q6. DHA・EPAサプリメントを飲むタイミングはいつがベストですか?
DHA・EPAは脂溶性の成分であるため、食事と一緒に(または食後に)摂取すると吸収率が高まるとされています。特に脂質を含む食事の後が効果的です。空腹時に摂取すると、胃腸の不調や魚臭いげっぷが出やすくなることがあるため、避けた方が無難です。朝食後や夕食後など、毎日決まったタイミングで摂ることで飲み忘れを防ぎやすくなります。
Q7. クリルオイルと普通のフィッシュオイル、妊活にはどちらがいいですか?
クリルオイル(オキアミ由来のオイル)とフィッシュオイル(魚由来のオイル)は、どちらもDHA・EPAの供給源として有効です。クリルオイルにはDHA・EPAがリン脂質型で含まれているため吸収率が高いとされ、さらに抗酸化成分のアスタキサンチンも含まれている点がメリットです。一方、フィッシュオイルはDHA・EPAの含有量あたりのコストが低い傾向があります。どちらが妊活に優れているかという明確なエビデンスは現時点ではありませんので、価格・飲みやすさ・含有量などを考慮してお好みで選んでいただいて問題ありません。
Q8. 妊娠が判明した後もDHA・EPAを摂り続けていいですか?
はい、妊娠後もDHA・EPAの摂取を継続することが推奨されています。特にDHAは、胎児の脳や網膜の発育に不可欠な成分であり、妊娠中〜授乳中を通じて積極的に摂取することが国際的にも推奨されています。WHO(世界保健機関)は、妊娠中は1日200mg以上のDHAの摂取を推奨しています。ただし、妊娠がわかったら改めてかかりつけの産婦人科医に現在摂取しているサプリメントについて確認し、適切な量や製品について相談しましょう。
Q9. 男性もDHA・EPAを摂ったほうがいいですか?
はい、男性もDHA・EPAの摂取が妊活に有益である可能性を示す研究があります。DHAは精子の細胞膜に多く含まれる成分であり、精子の運動率や形態の改善に関与するとされています。2019年のメタアナリシスでは、オメガ3脂肪酸の補給が男性の精液パラメーターを改善する可能性が報告されました。妊活は二人で取り組むものですので、パートナーと一緒に魚中心の食生活を心がけると良いでしょう。
Q10. DHA・EPAを摂るだけで妊娠しやすくなりますか?
DHA・EPAはあくまで妊活をサポートする栄養素の一つであり、これだけを摂れば確実に妊娠できるというものではありません。妊娠には、ホルモンバランス、排卵、子宮内膜の状態、精子の質、年齢など、さまざまな要因が複雑に関わっています。DHA・EPAの摂取は、バランスの良い食事・適度な運動・十分な睡眠・ストレス管理など、総合的な体づくりの一部として位置づけましょう。不妊の原因がはっきりしない場合は、早めに専門の医療機関を受診することも大切です。
参考情報
- 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
- 厚生労働省「妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項」
- 文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」
- 日本生殖医学会「生殖医療ガイドライン」
- Wise LA et al., “Dietary fat and fecundability in 2 preconception cohort studies.” Am J Epidemiol. 2018
- Chiu YH et al., “Serum omega-3 fatty acids and treatment outcomes among women undergoing assisted reproduction.” Hum Reprod. 2018
- Safarinejad MR. “Effect of omega-3 polyunsaturated fatty acid supplementation on semen profile and enzymatic anti-oxidant capacity of seminal plasma.” Andrologia. 2011
- Nadjarzadeh A et al., “The effect of omega-3 supplementation on androgen profile and menstrual status in women with polycystic ovary syndrome.” J Clin Endocrinol Metab. 2013
- European Food Safety Authority (EFSA), “Scientific Opinion on the Tolerable Upper Intake Level of EPA, DHA and DPA.” 2012
- WHO, “Fats and fatty acids in human nutrition: Report of an expert consultation.” 2010
※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定のサプリメントや治療法を推奨するものではありません。個別の判断については、必ずかかりつけの医師にご相談ください。










